禅フォトギャラリーは、9月14日(金)から10月13日(土)まで、中藤毅彦 写真展「White Noise」を開催いたします。禅フォトギャラリーでは2011年の「Night Crawler」、2013年の「HOKKAIDO: Sakuan, Matapaan」に続き3度目となる中藤毅彦の今回の個展では、中藤が「破壊と再生を繰り返すアメーバの様に変容する怪物」と称する東京の街が「Night Crawler」以来再びテーマとなります。東日本大震災が起きた2011年3月11日以降7年間のその変遷を独自の視点で切り取った写真作品をモノクロ、カラー合わせて展示いたします。展覧会開催に合わせて、新刊写真集『White Noise』も刊行いたします。

福島の原発が爆発する映像がニュースで流れるのを見た時、何かが終わったのだと感じた。ふと、ブラウン管テレビ時代、放送が終わった後に画面に映っていた砂嵐と、シャーというあのノイズが頭に浮かんだ。節電の為に灯火が控えられた薄暗く陰気な街では、放射能対策のマスクを付けた暗い顔の人々が、何かを恐れる様に当て所なく彷徨っていた。

しかし、それは終わりの始まりだった。先の見えない混迷の時代の中でも東京という怪物は、その歩みを止める事はなかった。そこには、依然として無数の肉体と営みがあり、体温を感じる古き街並と無機的な再開発のせめぎ合いがあり、東京は制御不能なエネルギーが渦巻く魔都であり続けている。

更には、2020年のオリンピックなる虚構の旗印を打ち立てて再び大きく蠢き出した。僕には、それはポジティブなエネルギーと言うよりはアナーキーで虚無的な混沌と感じられてならない。

ー中藤毅彦

Artist Profile

中藤毅彦

1970年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部中退、東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。モノクロームの都市スナップショットを中心に作品を発表し続けている。国内の他、近年は東欧、ロシア、キューバなど世界各地を取材。自身の作家活動とともに、四谷三丁目にてギャラリーニエプスを運営。2013年に「HOKKAIDO: Sakuan, Matapaan」にて第29回東川賞特別作家賞、2015年に「Street Rambler」にて第24回林忠彦賞を受賞した。主な出版物に『Enter the mirror』(1997年、モール刊)、『Winterlicht』(2001年、ワイズ出版刊)、『Night Crawler』(2011年、禅フォトギャラリー刊)、『HOKKAIDO: Sakuan, Matapaan』(2013年、禅フォトギャラリー刊)、『White Noise』(2018年、禅フォトギャラリー刊)などがある。

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