禪フォトギャラリーは9月26日から10月13日まで、中矢昌行の新作展を開催いたします。愛する家族と猫に捧ぐ前作「ネコパシー」を発表して以来、禪フォトギャラリーでの4年ぶり2度目の個展となります。

本作は中矢が2005年から10年にわたり撮影してきたシリーズです。

この広大な土地で猫に遭遇するのは偶然か、それとも必然か。街を歩き、立ち留まり、待つ。そしてカメラに収める。中矢はそんなことを長い間続けてきた。

最初は寄った。ある時、いや、違うなと思いそれからは離れた。
どんどん離れていった。
居そうな所には何年も通い、通り道を調べ、釣り人のように待つこともあった。
そして10年が過ぎた。

ー中矢昌行

自宅のバルコニーから外の世界へ踏み出すと、見慣れた街の風景が徐々に別の貌に変わってゆく。

公園の裏側にある坂道。
馴染客が通うゴールデン街の裏道。
雑草が生い茂る堤防。
Y字路の分岐点。
賑やかな温泉街。
都会の中に潜む墓地。
人の気配のない通り道。

そんな風景の片隅に猫が居る。

猫は時に昼寝をし、散歩をし、何かを追いかける。
私たちに凛とした姿を見せた瞬間、その身を隠そうとする。かと思うと見詰め返したりもする。
誰かと会話を交わしているように鳴く彼等は、まるで人間のようにこの世界で生活をしている。
目の前を凝視すればするほど世界は拡散していく。やがて視線は対象にぶつかって跳ね返り、自分自身に投影される。中矢はそんな風景の中に佇み、躊躇する。

一つの区切りとしてこの写真集を出すことにより、
良い意味で、私を猫呪縛から解き放ってくれると信じる。

「猫よ、さようなら。」