劉珂(リュウ・ケ)の作品の題名である「平湖」は、毛澤東の詩に由来する。この詩は史上最大の土木工事の一つである三峡ダムプロジェクトを彷 彿とさせる。劉は、三峡ダム建設の影響を受ける揚子江川沿いの地域と重慶市周辺を、この地域に暮らす人々が払う代価を問いながら写真に収めた。

一見すると、劉の作品は穏やかで内向的に見える。私達は、中国の一般的な生活から取り残された人々の疎外感や孤独感を、特に「霧の都市」またはその夏の灼熱の暑さか ら中国の「三大火炉」の一つとも言われる重慶で撮られた作品から感じる。猛暑や極寒、汚染や騒音が広大な建設現場を取り囲む。そんななか、むしろ不意に、写真家は混沌の中から人々の悲哀と美に光を当てる。そして私達は、人々の生きる力と、同胞の仲間によせ劉珂の思いやりと愛情に気付く。

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