写真家でカメラ評論家でもある田中長徳が、1975年に東ベルリンで手に入れたソビエト製のパノラマカメラ、ホリゾントで当時のヨーロッパを撮影したシリーズ。パリ、西ベルリン、ケルン、ハンブルグ、デュッセルドルフ、ウィーン、ヴェネチア、アムステルダム、プラハなどの街角の日常の風景がパノラマサイズというユニークなスケールで切り取られている。同じくプラハの街をパノラマカメラで撮影したチェコの写真家Josef Sudekへのオマージュ作品でもある。

「パノラマ写真の魅力と言うことに関して解説分析する事は簡単なことでは無い。唯一重要な事はパノラマ写真は一般の写真芸術がいかに現実世界を切り取るかと言うことを重要な芸術的ポイントであると考えているのに対して、パノラマ写真はカメラアングル等最初から気にしてないのである。
重要なのは現実をいかに写真家の美意識で芸術的にトリミングするかと言うことではなくて、写真家の立ち位置の方がはるかに重要なのだ。つまり写真家が共同幻想として持っている『切り取ることが自分の芸術の成り立ち方である』と言う考え違いを見事に一掃してくれることにある。(中略)
私のパノラマ写真は言うまでもなく散歩の写真の延長と言うことだ。首を振りながらそこら辺に良さそうなカフェとか酒場とかないであろうかと探すこと。平和的なパノラマ写真。これが私にとってのパノラマカメラの正しい使い方と言うわけだ。」
ー田中長徳

-判型
189 × 267 mm
-頁数
108頁、掲載作品:86点
-製本
ハードカバー
-発行年
2020
-言語
英語、日本語
-エディション
750
-ISBN
978-4-905453-90-1

Artist Profile

田中長徳

1947年、東京生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業。在学中より作品を雑誌やギャラリーで発表し、卒業後はウィーン、ニューヨーク、プラハに滞在して写真家として活動。カメラに対する造詣も深く、現在も専門誌へ多数執筆している。

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