国内外で積極的に作品を発表している山縣勉。「国士無双」、「涅槃の谷」に続く本作は、女性たちのプライベート空間を赤外線監視カメラで捉えた、スリリングで野心的な作品集。観る者の想像を強く掻き立て、ファンタジーの世界に誘い込む。別冊には粟生田弓の解説を収録。

「彼女たちに興味を持ったのは、きっと自分が年をとったせいなのだろう。多くの20歳代の女性から感じる不可解な冷淡さと、同時にもつ大胆さ。彼女たちを覗いてみたい、妖しい魅力を解き明かしたいという欲望は、こうした方法を私にとらせた。

私はインターネットの掲示板や知人の紹介を通じて撮影に協力してくれる女性を探しはじめた。会ってみるとみな意外なほど落ち着いており、警戒心もない。職業はOLや教師、美大生などさまざまで、彼女たちは仕事や家族のことをよく話した。他を寄せつけない意志の強さを持っているかと思えば、何もわかっていないのではないかと思わせる危うさも感じさせる。それは当初から私が抱いていた印象を変えるものではなかった。
趣旨を説明し、動体を検知すると自動的に撮影する動物監視用の赤外線カメラを女性たちに預けた。操作が不要で、音や光を発することなく撮影し、画像を確認する機能はない。彼女たちは自分の部屋でカメラを前に動き回った。」
(作者あとがきより)

判型
256 × 181 x 31 mm
頁数
本文64枚、テキスト別紙12頁
製本
スリップケース
発行年
2018
言語
英語、日本語

Artist Profile

山縣勉

1966年東京生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科卒。主な個展に「国士無双」(2012年、禅フォトギャラリー)、「Thirteen Orphans」(2013年、Colorado Photographic Arts Center/コロラド)、「涅槃の谷」(2016年、禅フォトギャラリー・2017年、gallery176/大阪)、主な出版物に『Bulgarian Rose』(私家版、2011年)、『国士無双』(2012年、禅フォトギャラリー)、『涅槃の谷』(2016年、禅フォトギャラリー)、新装版『国士無双』(2017年、Case Publishing & 禅フォトギャラリー)、『観察 SURVEILLANCE』(2018年、Case Publishing & 禅フォトギャラリー)、『私の小さな宇宙』(2023年、禅フォトギャラリー)などがある。2018年にはAthens Photo Festival “Pale Red Dot” に参加するなど国際的に活動している。作品はニューメキシコ大学美術館、ディーアール・バウ・ダジ・ラッド・ミュージアム(ムンバイ)に収蔵されている。

Gallery Exhibitions