2018年に一作目の写真集『旅人』を刊行して以来、禅フォトギャラリーは西村の写真に対する姿勢を反映させながら、彼女の初期から近年の未公開作品を包括的に三部作として紹介しており、『続 (My Journey II. 1968-1989)』はその二作目となる。西村は旅の中で直感的にふと身体が動く瞬間を、粒子の粗いハイコントラストのモノクロスナップショットで表現した作品で知られている。1973年に最初の写真集である『しきしま』を刊行して以来、彼女は旅を続け、そのスナップショットのスタイルを貫いてきた。これまで刊行してきたそれぞれ異なる主題の10冊の写真集においても、旅の記録と私的なスナップショットという、彼女の手法の独自性が示されている。

70年代後半は、集中的に東京を撮影した。これまであまり縁がなかった城東、城北地区も広く歩いた。この頃は学齢前の娘を連れて撮影することが多かった。浅草でチャンバラの実演をしていた大道芸人に「おじちゃんと旅に出よう」と言われ、困った顔をしてふり向いた娘の表情を覚えている。
― 西村多美子『続 (My Journey II. 1968-1989)』あとがきより抜粋

-判型
219 × 250 × 13 mm
-頁数
156頁、掲載作品106点
-製本
ソフトカバー
-発行年
2020
-言語
英語、日本語
-エディション
700
-ISBN
978-4-905453-99-4

Artist Profile

西村多美子

1948年東京生まれ、1969年東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)卒業。在学中に唐十郎率いるアングラ劇団「状況劇場」の舞台に通い、麿赤児や四谷シモンなどを撮影し、復帰前の沖縄へ初めての一人旅へ出る。卒業後、森山大道、多木浩二、中平卓馬というプロヴォーク運動で大きな影響力を持った3人と出会い、1970年まで暗室で彼らの制作を手伝う。1973年にそれまで北海道、東北、北陸、関東、関西、中国地方を旅して撮影したものをファースト写真集「しきしま」(東京写真専門学校出版局)として刊行する。

バイトや雑誌の仕事で旅費を貯め、1970年から80年代にかけて日本各地を旅し、また娘を連れて東京なども歩いて撮影している。1990年代以降は近代化画一化された日本を飛び出して、ヨーロッパ、南米、東南アジアなど海外を撮影した。

西村は写真を撮り始めた68年頃から現在に至るまで、半世紀を超える作家活動歴の間、一貫してフィルムで撮影し、自ら暗室でプリントを制作するという姿勢を変えていない。西村の写真は、詩的でスピリチュアル、そして深く個人的なものである。西村は自身のキャリアを振り返り、「旅の連続」と表現し、遊牧民のような人生観で写真を撮り続けてきた。旅が秘めているものを明らかにする彼女の写真は、旅先で出会う人生の多様な肖像である。

主な出版物に『しきしま』(東京写真専門学校出版局、1973)、『熱い風』(蒼穹舎、2005)、『実存1968-69状況劇場』(グラフィカ編集室、2011)、『憧景』(グラフィカ編集室、2012)、『しきしま 復刻新装版』(禅フォトギャラリー、2014)『猫が・・・』(禅フォトギャラリー、2015)、『舞人木花咲耶姫 — 子連れ旅日記』(禅フォトギャラリー、2016)、『旅人』(禅フォトギャラリー、2018)、『旅記』(禅フォトギャラリー、2019)、『続 (My Journey II. 1968-1989)』(禅フォトギャラリー、2020)等。香港M+美術館に作品が収蔵されている。

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